この記事の結論
NVIDIAのAIエージェント実行基盤NemoClawが2026年9月に相次ぎ更新。v0.0.127〜129でOpenShellへのライフサイクル移管、設定エクスポート、Windows WSL GPU検証などを強化した最新動向を整理します。
NemoClaw最新版v0.0.129が公開、9月だけで複数リリース
NVIDIAのAIエージェント実行基盤「NemoClaw」が、2026年9月に入って立て続けにアップデートされています。公式リリースノートによれば、9月23日公開のv0.0.129では設定エクスポートと遅延オンボーディングの機能拡張、OpenClaw再起動時の準備状態の改善、ローカルゲートウェイ全体にまたがるリカバリの修正が行われました。加えて、ホストOSのレポート機能とWindows WSL環境でのGPU検証が強化されています。
復旧ガイダンスは記録済みのランタイムプロバイダに従う形となり、リビルドは確認後に所有レジストリへ委譲されます。また、ホストローカル推論のオンボーディングを再開した場合、ランタイム作成前に保持していた権限を予約し、その予約に失敗した際には実行可能な診断情報を返すようになりました。短い間隔で細かな改善を積み重ねる、活発な開発ペースが読み取れます。
OpenShellへのライフサイクル移管が完了に近づく
9月のリリースで一貫して進められているのが、OpenShellランタイムへの責務集約です。9月17日のv0.0.127では、ゲートウェイ・プラグイン・パッケージのライフサイクル所有権をOpenClawとHermes側へ戻しつつ、OpenShellのサンドボックス制御は維持するという設計変更が入りました。具体的には、OpenClawとHermesがネイティブなゲートウェイプロセス、プラグイン、パッケージ、子プロセス、フックなどを自ら所有する形になっています。
一方で9月22日のv0.0.128では、標準DockerおよびネイティブPodmanのサンドボックスライフサイクルが、通常のサンドボックス作成を含めてOpenShellの背後に留まるよう整理され、OpenShellライフサイクル所有権のさらなる完成が図られました。役割分担を明確にすることで、障害時の復旧経路と責任範囲が追いやすくなる狙いがあると考えられます。
設定エクスポートとセキュリティ機能の強化
運用面で注目したいのが、設定エクスポート機能の進化です。9月4日のv0.0.120では、シークレットを含まない検証済みの設定エクスポートと、ホストおよびゲートウェイを対象とするグローバルな「doctor」コマンドが追加されました。nemoclaw doctor は、オンボーディング前やサンドボックスを選択していない状態でも読み取り専用のホスト/ゲートウェイ診断を実行でき、人間が読める形式と機密情報を伏せたJSONレポートの双方に対応します。
さらにv0.0.128では、対応するシングルエージェント・サンドボックス向けに正規形式のv1alpha1設定エクスポートが追加されました。9月15日のv0.0.126では、Podmanオンボーディング、破壊的操作に対する安全性、シークレットのマスキング、ポリシー適用、パッケージ実行といったセキュリティ関連の挙動が強化されています。企業利用を見据えた「安全に持ち出せる構成情報」の整備が進んでいる形です。
NemotronモデルとDGX Spark/DGX Stationへの最適化
NemoClawはNVIDIA Nemotronモデル群との組み合わせを前提に設計されています。7月15日のv0.0.84では、DGX Station向けにNemotron Ultraの「エクスプレスセットアップ」、信頼できるプライベート推論エンドポイント、モデル対応の準備状態チェックなどが追加されました。DGX Stationでは、ワンコンファメーションで構成を選択できる簡易導入経路が用意されています。
また8月11日のv0.0.107では、1台のDGX Spark向けに実験的なNemotron 3.5 Lightningプロファイルと、自動化向けにSlackの準備完了を待てる仕組みが追加されました。同リリースではコールドスタート時のオンボーディング、ダッシュボードのフォワーディング、Windowsホスト上のOllama、Hermes運用、サンドボックス復旧、CLIのインベントリ出力も改善されています。ローカルGPU環境で常時稼働エージェントを回す、というNemoClawの狙いが色濃く表れた内容です。
GTC 2026での発表からの流れとNeMo Customizerの位置づけ
NemoClawが正式に世に出たのは2026年3月16日のGTCでのことです。NVIDIAは、OpenClawエージェントプラットフォーム向けの「NVIDIA NemoClawスタック」を発表し、NVIDIA Nemotronモデルと新発表のNVIDIA OpenShellランタイムを単一コマンドで導入できる点、そしてプライバシーとセキュリティの制御を追加する点を打ち出しました。発表に先立つ3月上旬には、NVIDIAがオープンソースのAIエージェント基盤を準備しているとの報道も出ていました。
報道ではこの動きについて、最小限の人手で複雑なタスクを計画・実行するAIエージェントへのNVIDIAの関心の高まりを反映するものと位置づけられ、NemotronやCosmosといった基盤モデルの投入、そしてデータ準備・カスタマイズ・監視・最適化までエージェントのライフサイクルを管理するNeMoプラットフォームの拡張と併せて説明されています。その中核のひとつがNeMo Customizerで、Volcanoスケジューラを用いてGPUノード上で管理されたトレーニングジョブを実行する軽量APIサーバーとして提供されています。なお、NeMoマイクロサービスはNeMo Platformへ移行しつつある点にも注意が必要です。
エンタープライズ導入での注目ポイント
パートナー企業側の動きも活発です。AibleはNVIDIA NeMoスタック全体をサポートし、NeMo Customizer、NeMo Evaluator、NeMo Data Designerを含むNeMoマイクロサービスによって、企業がNemotron 3 Nano Omniをファインチューニングし安全にデプロイできるとしています。同社はまた、適切な可観測性のもとでコードを実行するためにNVIDIA OpenShell(旧称NemoClaw)の早期アクセス版を活用していると説明しています。
一方で、OpenClaw系の新興AIツールについては、特にNVIDIAが狙うエンタープライズ顧客にとって多くのセキュリティリスクが指摘されている点も専門家から示されています。NemoClawが9月のリリースでシークレット秘匿、破壊的操作の安全性、ポリシー適用といった領域を繰り返し強化しているのは、この懸念に正面から応えようとする動きと読めます。バージョン番号が依然0.0系である点も踏まえ、本番導入では変更履歴の追跡が欠かせません。