この記事の結論
NVIDIAのエージェント実行基盤NemoClawが2026年9月10日にv0.0.123へ更新。設定エクスポート拡張やOpenShellゲートウェイ連携、Nemotron 3 Ultra/3.5 Lightningの推論プロファイル整備など最新動向を日本語で解説します。
NemoClaw v0.0.123が公開、設定エクスポートと外部連携を拡張
NVIDIA NemoClawのリリースノートによると、2026年9月10日付でv0.0.123が公開されました。今回のアップデートは、管理対象のOpenClawおよびHermesサンドボックスに対する設定エクスポート機能の拡張が中心です。
nemoclaw config exportは、検証済みのAPIキー認証や既定値以外のインターフェース設定を含む形で、正規化されたHermesサンドボックス構成を書き出せるようになりました。一方でOAuth認証とHermesのツールゲートウェイは、引き続きエクスポート契約の対象外とされています。
OpenClaw側のエクスポートでも、管理対象のBrave Search参照、プロキシ設定、ホステッド推論のチューニング、実行設定、ダッシュボード設定、直接ツール開示、ローカル会話診断といった項目が保持されます。加えて、実験的な外部コンポーネントのオンボーディング契約が追加され、インストーラーの復旧処理、サンドボックスのライフサイクル管理、推論診断も改善されました。
OpenShell中心の統制へ、ゲートウェイとライフサイクル管理を強化
直近の更新では、NVIDIA OpenShellをランタイム統制の中核に据える方向性が一段と鮮明になっています。Hermes Portableのオンボーディングは、選択したOpenShellゲートウェイを記録し、後の復旧やアンインストール処理で参照できるようになりました。起動と復旧の際にはレシート管理下のホストフォワードを修復してからReadyを報告し、アップグレード時にもPortableのライフサイクルとフォワードのアイデンティティが保持されます。
9月4日公開のv0.0.120では、Hermesランタイムのサポート版が0.20.6へ更新され、ShieldsがNemoClawコアから外され、管理下のホストフォワーディングがOpenShellのサービスフォワーディングへ移行しました。さらに、秘密情報をYAML/JSON出力に含めず、矛盾があれば処理を中断するフェイルクローズ型の設定エクスポートと、ホストおよびゲートウェイ全体を診断するdoctor機能が追加されています。
9月1日のv0.0.118では、Hermesのライフサイクル計画向けにヘッドレスなパッケージ境界が導入され、資格情報なしで外部OpenShellゲートウェイの健全性を確認できる仕組みも加わりました。新しいlifecycleパッケージはHermes 0.19.0の決定論的なライフサイクル計画とOpenShell 0.0.106での読み取り専用エージェント観測に対応し、トランスポートや認証、永続化、変更処理は保持しない設計です。
Nemotron 3 Ultra/3.5 Lightning──推論プロファイルの選択肢が拡大
推論バックエンドの選択肢も急速に広がっています。7月15日の更新では、DGX Stationにワンコンファームのエクスプレス経路が用意され、固定されたNVIDIA Nemotron 3 Ultra 550BのマネージドvLLMレシピが選択されるようになりました。--station-deepseekを指定すれば従来のDeepSeek V4 Flashレシピも利用できます。
8月11日のv0.0.107では、DGX Spark 1台向けに実験的なNemotron 3.5 Lightning 30B-A3B NVFP4プロファイルが追加されました。検証済みの公開チェックポイント、ARM64ランタイムイメージ、パーサー、リソース設定、構造化された起動引数が固定される一方、Spark Expressの自動既定は引き続きQwenプロファイルが担います。
8月28日の更新では、実験的なマネージドllama.cpp経路で、対象となるDGX Spark(Arm64)およびLinux x86_64のNVIDIA GPUホスト上でNemotron 3 Nano 30B-A3Bが提供され、オンボーディング時に推奨されるようになりました。ローカルNVIDIA NIMの選択では、DGX Sparkのユニファイドメモリ上限を含む利用可能メモリ制限が明示的に適用されます。
9月4日には、Nemotron 3 Superのエンドポイント検証が必要なサンプリングおよびチャットテンプレートのパラメータを送るよう改められ、既定のModel Routerプールでは廃止されたNemotron NanoのルートがGPT-OSS 20B Highに置き換えられました。
Nemotron 3 Ultraは長時間稼働エージェント向けのオープンモデル
基盤モデル側では、NVIDIA Nemotron 3 Ultraが「より小さく、より速い、長時間稼働エージェント向けのオープンモデル」として位置づけられています。NVIDIAは、複雑なエージェンティックタスクにおいて最大5倍高速な推論と最大30%のコスト削減を実現するとしています。
NVIDIAはエージェント開発スタック全体を整備しており、NVIDIA NeMoがプロンプト、スキル、モデルルーティング、特定ドメインや地域向けのモデルカスタマイズを通じてエージェントの最適化・評価・ガバナンスを支えます。その上でNemoClawが実行環境とポリシー統制を提供する構図です。
提供チャネルとしては、Hugging Face、ModelScope、OpenRouter、build.nvidia.com(NVIDIA NIMマイクロサービス)に加え、幅広いエコシステム経由での利用が予定されていました。第三者の検証では、同一のOpenClaw構成をOpenShell内で動かした比較において、Nemotron 3 Ultraがより直接的に計画し、実行時間が短く、手戻りも少なかったと報告されています。
NeMo Customizerによる「ペットではなくインターンとして育てる」学習
NemoClawとあわせて注目されているのが、NVIDIA NeMo Customizerを中核とするポストトレーニングの実践です。Aibleが提唱する「AIエージェントをペットではなくインターンのように訓練する」アプローチでは、エージェントの推論ステップやツール呼び出しに対するきめ細かなユーザーフィードバックを用い、NeMo Customizer、NeMo Evaluator、NeMo Data Designerを組み合わせてモデルを事後学習させます。
この手法で長らく課題とされてきたのがコールドスタート問題です。小型モデルを「インターン訓練」で立ち上げるには、より大きな教師モデルが必要になる場面が多い一方、多くのフロンティアモデルはライセンス条件により、その出力を事後学習に用いることを禁じています。
ここで意味を持つのがNemotron 3 Ultraの位置づけです。Nemotron 3ファミリー最高品質の教師モデルでありながら、寛容なライセンスと公開された学習データ・パイプラインを備えるため、その出力を用いて小型のNemotron 3 SuperやNanoを事後学習させられます。既存のNVIDIAクラウドパートナーのエンドポイントを指定するか、プライベートサーバーへ自動導入する形での利用が想定されています。
エンタープライズ活用:EDA・製造・3D制作まで広がるブループリント
NemoClawは単体のツールではなく、企業が自社向けに改変・統制し、任意の環境で実行できるオープンなブループリントとして提供されています。具体的には、LangChain Deep Agents、チューニング済みのNemotron 3 Ultraプロファイル、そしてNVIDIA OpenShellをひとつにまとめた構成です。
各ブループリントには、NVIDIA Agent Toolkitのコンポーネントとして、Nemotronをはじめとするフロンティアモデル、特化と最適化を担うNVIDIA NeMo、ランタイムのポリシー制御を担うNVIDIA OpenShellが含まれます。
適用領域も広く、EDA分野ではマルチステップの検証ワークフローを統合し、CadenceはRTL検証を数週間から数時間へ短縮したとされています。製造分野では形状の反復検討、熱設計、射出成形、製造オペレーションの自動化が挙げられ、クリエイティブ領域では統制されたサンドボックス内のローカルモデルからBlenderやNVIDIA Omniverseのワークフローを制御する例も示されています。さらにNous ResearchのHermesと組み合わせ、スキルと記憶のループをOpenShellのランタイム制御下で回す自己改善型エージェントも紹介されています。
導入検討のポイントと今後の展望
一連の更新履歴を通して読むと、NemoClawの開発方針は徹底したフェイルクローズ設計に貫かれています。たとえばサンドボックスの再構築では、宣言された状態ディレクトリやファイルを保全できない場合、--force指定時であっても元のサンドボックスを削除する前に処理を停止します。クリーンアップに失敗した際は不完全なスナップショットを保持しつつ、一覧や復元の選択肢から除外し、所有者のみがアクセスできる状態で扱うよう求めています。
推論経路の安全性も同様で、カスタムエンドポイントの受け入れはRFC1918やCGNAT、IPv6 ULAといったプライベート範囲に解決される場合に限られ、メタデータやリンクローカル、マルチキャストなどの予約範囲に対してはフェイルクローズでのブロックが維持されます。
導入を検討する企業は、まず推論プロバイダーの選定(NVIDIAホステッド/マネージドvLLM/NIM/ローカルOllama)と、OpenShellによるポリシー境界の設計から着手するのが現実的でしょう。週次に近い頻度でバージョンが刻まれているため、バージョン固定と定期的なアップグレード検証を運用計画に織り込むことが推奨されます。