この記事の結論
NVIDIAは2026年9月14日、AIエージェント実行基盤NemoClaw v0.0.124を公開。管理対象OpenShellランタイムを0.0.116へ更新し、アップグレード復旧やローカル推論、サンドボックス復旧、Deep Agents Codeの対話実行を改善した。
NemoClaw v0.0.124の概要
2026年9月14日、NVIDIAはAIエージェント実行基盤「NVIDIA NemoClaw」の最新版 v0.0.124 を公開した。今回のリリースでは、管理対象の NVIDIA OpenShell ランタイムが 0.0.116 へ更新され、アップグレード処理、ローカル推論、サンドボックス復旧の各領域が改善されている。加えて、LangChain Deep Agents Code の対話型実行機能が復元され、エージェントのメッセージ処理も改良された。NemoClaw は 2026年3月16日にアーリープレビューとして提供が始まった比較的新しい基盤であり、数日単位で細かなリリースが積み重ねられている点が特徴だ。v0.0.124 は派手な新機能追加よりも、運用中の企業環境で問題になりやすい「壊れ方」を丁寧に潰す、安定性重視のアップデートと言える。
OpenShell 0.0.116への完全カットオーバー
今回の中核は OpenShell 0.0.106 から 0.0.116 への完全な切り替え(カットオーバー)である。GitHub の NVIDIA/NemoClaw リポジトリ上の該当プルリクエスト(PR #11251)では、アクティブなセレクタ、インストーラ、ランタイムイメージ、TypeScript SDK、そしてクレデンシャル境界のエビデンスまでを対象に、0.0.116 へ揃える形で更新が行われたとされる。OpenShell は NemoClaw におけるランタイムのポリシー制御層にあたり、エージェントがどのツールやネットワークに触れられるかを実行時に規定する。バージョンを中途半端に混在させないという方針は、監査やセキュリティレビューを前提とする企業導入では重要な意味を持つ。
アップグレードとサンドボックス復旧の堅牢化
運用面の改善も多い。アップグレード復旧は、置き換えられたパッケージ版ゲートウェイがバインドされるまで待機してからサンドボックスを復旧するようになった。これにより、ゲートウェイ未起動の状態で復旧処理が走って失敗するというタイミング依存の不具合が避けられる。また、アップグレード前の必須バックアップが失敗した場合に、復旧ポイントのように見える不完全なディレクトリを残さないよう変更され、クリーンアップに失敗した際は保持されたパスが報告される。リビルド処理は記録済みのサービングプロファイル選択を維持し、再作成時に設定を失わない。名前付きサンドボックスのコマンドは、ゲートウェイポートのレジストリルートをまたいで、そのサンドボックスに記録されたゲートウェイを使うようになった。ポータブル Hermes の復旧は、保存された停止状態の OpenShell を突き合わせ、必要なフォワードを修復する。
Deep Agents Codeの対話実行とメッセージ処理
エージェント開発者にとって注目なのが LangChain Deep Agents Code の扱いの変化だ。管理対象の Deep Agents Code の対話セッションでは、OpenShell サンドボックス内でネイティブのローカルシェル、起動コマンド、インタプリタの挙動が復元された。一方でヘッドレス(非対話)でのシェル実行は引き続き無効のままで、ヘッドレスの非シェル系ツールは自動承認が維持される。つまり人間が画面の前にいる対話セッションでは利便性を戻しつつ、無人実行では危険度の高いシェル実行を許さないという線引きが明確化された形だ。さらに非対話時の応答処理やセッション前の推論検証も改善され、エージェントのメッセージ配送はパイプ入力を保持し、メッセージが既に与えられている場合はアイドル状態の標準入力を待たなくなった。管理対象 OpenClaw のハートビートは分離セッションを用い、メインの会話を変更しない。
直近リリースの流れ:9月に入って4本目の更新
NemoClaw は 9月に入ってから高頻度で更新されている。9月4日の v0.0.120 ではシークレットを含まない検証済み構成エクスポートと、ホストおよびゲートウェイのグローバルな doctor コマンドが追加され、Hermes ランタイムのサポート版が 0.20.6 に更新された。同時に Shields が NemoClaw コアから廃止され、管理対象ホストのフォワーディングは OpenShell のサービスフォワーディングへ移行している。9月8日の v0.0.121 では管理対象 MCP のツール拒否ルール(--deny-tool による完全名・グロブ指定)が追加され、スキルのライフサイクルがエージェント所有の状態へ移された。9月10日の v0.0.123 は管理対象 OpenClaw/Hermes サンドボックスの構成エクスポート拡張と、実験的な外部コンポーネントのオンボーディング契約を導入した。v0.0.124 はこの流れを受けた安定化リリースである。
Nemotron・NeMo Customizerとエコシステムの広がり
NemoClaw 単体の更新だけでなく、周辺のモデルとカスタマイズ基盤も動いている。NVIDIA の製品ページによれば、各ブループリントには NVIDIA Nemotron などのモデル、特化・最適化のための NVIDIA NeMo、実行時ポリシー制御の NVIDIA OpenShell が Agent Toolkit のコンポーネントとして含まれる。7月8日には LangChain が NVIDIA と共同で 「NemoClaw for LangChain Deep Agents」ブループリントを発表し、LangChain Deep Agents Code、Nemotron 3 Ultra、OpenShell ランタイムを組み合わせて企業が自社ワークロード向けにチューニングし、品質・コスト・速度を最適化できる構成を示した。またポストトレーニング側では、NeMo Customizer・NeMo Evaluator・NeMo Data Designer を用いて、エージェントの推論ステップやツール呼び出しへのフィードバックからモデルを事後学習する取り組みが Aible などのパートナーから報告されている。なお NemoClaw と OpenShell は、エージェントの信頼チェーンのうち「デプロイ側」を押さえるものであり、ガバナンス全体の完成解として扱うべきではないというアナリストの指摘もある。
導入・アップグレード時の実務ポイント
アップグレードを検討する場合、まず OpenShell が 0.0.116 へ切り替わる前提で、既存のポリシーやランタイムイメージ、TypeScript SDK 利用箇所を確認したい。次に、v0.0.120 で Shields が NemoClaw コアから廃止され、ホストフォワーディングが OpenShell のサービスフォワーディングへ移行している点は、既存の運用スクリプトに影響しうる。v0.0.124 ではアップグレード前の必須バックアップが失敗した際の挙動が変わっているため、バックアップ先の容量とパーミッションを事前に点検しておくと安全だ。Deep Agents Code を無人ジョブで使っている場合は、ヘッドレスのシェル実行が無効であることを前提に、対話セッションと非対話セッションでワークフローを分けて設計するのが現実的だろう。実行環境としては NVIDIA DGX Station や DGX Spark といった専用プラットフォーム上での動作が想定されている。